2830号


インボイス制度 導入に備える

今から5年後の2023年10月、個人タクシー業界にとって重要な税制度の変更が行われる。「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の導入だ。業界幹部からは「インボイスが導入されれば、個人タクシーはビジネス関係の仕事を失う恐れがある」と懸念する声が出ており、対応を検討する動きも始まっている。
個人タクシーの大半は年間の売り上げが1千万円に達しない消費税免税事業者なので、2023年10月以降は仕入れ税額控除の対象にならず、利用する企業側にとって、法人タクシーより余分にコストがかかることになる。

例えばサラリーマンが社用で流しのタクシーに乗り1100円の運賃を支払った場合、課税の法人タクシーでは1000円プラス消費税100円と明記した領収証(インボイス)が出る。その消費税100円分は仕入れにかかった消費税として、企業が納税する際に控除できるのだが、免税の個人タクシーでは税抜1100円となり、控除することができない。


消費税の確定には"仕入れ税額"を差し引く


日本の消費税はモノやサービスを購入する際に、その価格に上乗せして課税されるが、最終的に税を負担するのは「消費者」という原則がある。各業者は仕入れ値や経費にかかっていた消費税を、売る時にかけた消費税から引き、その差額を納税する仕組みとなっている。これが『仕入れ税控除』だ。
この仕入れ税額を計算するためには、証拠となる請求書等(請求書、領収書、納品書など)の保存が必要とされている。ただ、現在は請求書などに消費税の額を記載する義務は無く、消費税免税事業者から仕入れた場合も"仕入れ税額控除の対象"とすることが可能だ。しかし、2023年10月に「インボイス制度」が始まるとそれが認められなくなる。


インボイス制度は軽減税率導入時に必要


インボイス制度では、仕入れ税額控除を受けるための証拠になる請求書などが「適格請求書(インボイス)」として区別されることになる。
インボイスを発行するためには課税事業者として登録する必要があり、登録番号、消費税額と適用税率、取引年月日などの記載事項を満たしたものだけがインボイスと認められる。登録事業者にはインボイスを交付する義務があり不正交付には罰則も設けられる。
ただ、小売業や飲食業、タクシーには「簡易インボイス」の発行が認められているので、通常のインボイスと比べ @交付を受ける相手(乗客)の名前の省略 A消費税額か適用税率のどちらかのみ記載−−と、簡略化することができる。


なぜインボイスが必要になるのか


次の消費税引き上げ(2019年10月)では軽減税率が導入され、モノによって8%と10%の税率が分かれるためだ。複数の税率のもとで、仕入れ税額を正しく計算するためにインボイスが導入される。
2023年10月までは「区分請求書等保存方式」という経過措置がとられるのて、免税事業者からの仕入れでも従来通り控除でき、その後3年間は80%の控除となり、さらに3年間は50%の控除と、経過措置が設けられている。


個人タクシーのインボイスに対する3種の選択肢比較

@運賃値下げ メリット ・消費税分の運賃を下げれば、企業関係の仕事を失う恐れは無くなる
・「個人タクシーは益税」という批判を回避できる
・値下げによる需要喚起
デメリット ・公定幅運賃では、値下げできない可能性がある
・普通車では値下げできても、大型車は値下げできず、個人内で運賃格差が生じる
・同一地域同一運賃が崩れれば、法個業界の関係は悪化する
・法人側も対抗して値下げをすれば、規制緩和時代の不毛な値下げ競争が再燃
・仮に法個が普通車下限まで運賃を下げれば結局値下げ前と同じ状況に戻る
A消費税を納める メリット ・インボイスを発行できる
・車や燃料などの購入経費に掛かった消費税は控除できる
・「個人タクシーは益税」という批判を回避できる
デメリット ・仕事が減ったとしても、消費税を払う方が負担が大きい可能性がある
・自分は消費税を納めていても「個人タクシーはインボイスが出ない」と一括りにされる可能性がある
B特に大きな変更
はしない
メリット ・インボイスの影響がそれほどなかった場合や、駅付け中心などで、そもそも社用の利用が少ない人は何か変える必要は無い
・最初の3年は免税事業者からの仕入れでも80%は控除できる経過措置があるので様子見することも選択肢
デメリット ・もし影響が大きかった場合は対応で出遅れる


西日本豪雨で個人タクも被害

全国個人タクシー協会が10日時点でまとめた情報では、事業者宅の床上浸水が岡山県で4件、広島県で6件発生した。広島県では支部職員の自宅浸水1件あった。営業車の流出は広島県で1件、福岡県で2件発生。広島の事例では走行中に流され、事業者は無事救助されたものの胸部骨折の負傷を受けた。